円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
「ウィリアムったら、
メアリーではなくエリノアと踊りたい
だなんて。どういうつもりかしら」
ウィリアムが帰っていった後も、
アストン夫人は彼の言葉で、
一日中やきもきしていた。
メアリーが見かねて言った。
「ウィリアムは、
いつも私と踊ってくださるから。
気をきかせて、たまにはエリノアとも
踊りたいとおっしゃってるのよ。
バランスを取ろうとしているのだわ」
「バランスを取るために、
気を遣うなんてマネしなきゃいいのに」
夫人がため息をつく。
エリノアは、エリノアで、
二人とは全く違うことを考えていた。
侯爵家には多く蔵書がある。
多分、読みたかった本も。
しかも大量に。
やっぱり見に行くべきではないか。
いや、見に行ってウィリアムの
後について、恩着せがましく
解説を聞かされて、
書斎を見て回るのも癪に障る。
「でも、ウィリアムは
どうしてもそうしたいみたいよ」
メアリーは笑って言った。