キス税を払う?それともキスする?
 そんな奥村に南田は顔を近づける。

「ち、近いです!」

「認証させるんだろ?」

 気が変わらないうちに、そういうものだとの認識にさせなければ。

「い、今からですか?」

「なんだ。
 外の方が好ましいとは理解しがたいが、致し方ない。」

「違います!こっちが理解できません。
 焼き肉ですよ?食べてすぐ…とか…。」

 そうか…。
 確かに認証すると相手の息がかかる。
 それがまた…。

 この子とならどんな状況でも構わないと思うのだが、奥村さんへの配慮は欠けていたか…。

「なるほど。
 それは配慮に欠けたようだ。
 しかし同等の物を食している。
 気になるものか?」

「もう好きにしてください!」

 好きに…。

 やはり奥村さんの言動は迂闊過ぎる。
 機会をみて注意しなければ。

 南田は手を伸ばして奥村の口に何かを押し込んだ。


 ミントタブレット。
 エチケットではあるな。

 そう思いながら顔を近づける。
 照れた顔がなんとも言えず可愛らしい。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「まだ…何かあるのか?」

 このままでも構わないが…しかしやはり重ねたい衝動にかられる。
 何故だろう。中毒性の何かあるのか…。

「眼鏡を…。」

 そう控えめに言った奥村が非常に愛おしかった。
 それを見せないように努める。

「そうか。
 いつも阻害しているとは思っていた。」

 素直に眼鏡を外した。

 自分もこの方が緊張はしないが…やはり顔が見えないのは残念だ。

 そのまま南田は顔を近づける。
 もうくちびるに触れそうなほどの距離で少し意地悪を言いたくなる。

 触れそうな距離での会話がたまらない。
 …僕は変態か。

「目は閉じないのか?」

 かぁーっと赤くなる奥村を確認して満足するが、一転押しのけられた。

「すみません。帰ります。
 ご馳走様でした。」

 な…。

 調子に乗り過ぎたことを今さら後悔しても遅かった。

 そして個室でも逃げられてしまった。
 重ね重ね迂闊だった自分に言葉を失った。
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