キス税を払う?それともキスする?
 その時、急に外が騒がしくなって会話が中断された。

「キス税、はんたーい!」

「そうだ!反対だー!!」

「お客様。他のお客様のご迷惑になりますので…。」

「うるさい!キス税を払うのなんてまっぴらなんだよ!」

 ぎゃーぎゃー騒がしい大声は店員に連れていかれたのか、しばらくして静かになった。


「うらやましい…。」

「騒音がか?」

 フフッと力なく笑う華は首を振った。

「私も反対デモに参加したいくらいなんです。なのに自分の意見も言えないでいる…。
 あの人たちはすごいです。」

「なるほど。非常に面白く、興味深い意見だ。」

 この人にはそういう悩みはないんだろうな…。私をからかうくらいの余裕があるんだから。

「僕もプライバシーの侵害だと日々思っていた。」

「え?じゃ今までは…?」

「無論、税金を払っていた。
 プライバシーが保護されるなら安価だ。」

「でも…じゃ私とは?」

「君とは…。」

 南田は言い淀んだが、ほどなくして口を開く。

「契約関係だ。プライバシーとは無縁だろ。」

 どういう理由なのよ。なんとなく胸がチクッとした。

「私は契約しません。他の方をあたって下さい。
 今日はご馳走様でした。」


 頭を下げて立ち去ろうとする華に南田はおもむろにスマホを差し出した。

 意味が分からないままスマホを見ると画面には何かの動画が流れていた。
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