キス税を払う?それともキスする?

第13話 悪者

 午後からの仕事が始まると、ますます奥村の疲労した姿を見ることになった。
 まぶたを開けていられないほどに疲れているようだ。

「今度は視力の機能が低下するのか…。」

 頑張っていることは重々承知だ。
 そして本来なら優しい言葉をかけるべきだろう。
 しかし僕らの関係ではそれは許されない。

 南田は心を鬼にすると声を荒げた。

「君の機能は全くもって停止している。
 時間の浪費だ。
 僕は君とは仕事をし兼ねる。
 有給の提出を許可する。半休を取れ。」

「え?」

 さすがに眠気も吹っ飛んで目を丸くした奥村がこちらを見つめる。
 胸をズキッとさせながらも最終宣告を言い渡す。

「帰れと言っている。」

 大きな声と衝撃の内容に、近くにいた先輩が見かねて声をかけた。

「南田くん。
 奥村さんも頑張ってるんだ。
 もう少し優しく…。」

「奥村さんは僕とペアなんです。」

 冷たく言い放つと、声をかけた先輩が顔を引きつらせて離れていった。

 そう。これでいいんだ。
 南田は奥村さんに容赦ない。
 ペアで可哀想だ。そう思われなければ…。

 奥村はショックを受けた様子で帰り支度を始めている。
 泣かれなかったことが唯一の救いだった。
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