キス税を払う?それともキスする?
 奥村が休憩室へ向かったのを確認すると内線をかける。
 個別で部長にお願いしていた奥村への教育を頼むためだ。

「南田です。」

「あぁ。久しぶり。飯野だ。」

 ヘルプデスクにいる知り合いの飯野は若い子を連れてきて個人的に教育をしていた。
 その人に頼もうと思ったのだ。
 部長には許可を取ってある。

「素質はあるが基本がない奴がいるんです。
 教えてやってくれませんか。」

「ほう。
 南田がそんなこと頼むなんて珍しいな。
 いいぞ。いつからだ。」

「今からでも構わなければ、今から毎日午前中。
 奥村って奴です。」

「なんだ。午前中だけか?
 集中して一日でもいいぞ。
 仕事はいくらでも残業させろ。
 根性も鍛えなきゃな。」

 まぁ男ならそうなのか?
 しかし残業させろとは飯野のじいさんも古い考えの人だ。

 それに…。
 1日中、奥村さんと離れるなど…。
 いや。
 僕の私欲を優先しているわけではない。
 奥村さんに残業などさせるものか。

「おい。南田?聞いてるのか?」

「あぁ。すみません。
 午前中だけでお願いします。」

「まぁそう言うなら了解した。」


 席に戻ってきた奥村に資料を渡した。

「これから午前中はヘルプデスクの飯野さんのところに遣いに行ってくれ。」

 普通に、教育をしてきてくれ。
 とも言いづらく、遣いを頼まれた奥村は素直にヘルプデスクへ向かった。

 ふう。息をつくとまたパソコンに向かった。
 奥村が戻ってくるまでに進められる仕事を猛烈な勢いで進めていった。
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