キス税を払う?それともキスする?

第17話 音源

 マンションに帰り虚ろな時間を過ごしていると、電話が鳴った。

 相手は宗一で嫌な予感しかしなかったが、もう失うものなど何もないと思い直すと電話に出た。

「はい。」

「湊人?」

 想像していたよりも明るい電話口の声に拍子抜けする。

「どうしたんだ。」

「どうしたもこうしたも。
 あの子すごいな。」

 あの子って…どの子のことだ。
 無言の南田に宗一は言葉を重ねた。

「お前の可愛い子だよ!」

 宗一の言葉に奥村の顔が浮かんで、ズキッと胸を痛くさせた。

「そういう呼び方するな。」

「なんだよ。好きなんだろ?」

「な…。」

 好きって…僕がか?…そうなのか?
 僕は奥村さんが…。

 初めて自覚すると余計に虚しくなった。
 自分の気持ちに気づいたところで今さらだ。

「おいおい。
 まさか自分の気持ちに気づいてなかったとかか?
 勘弁しろよ。」

 余計なお世話だ…。
 だいたいなんの用があるというのか。
< 164 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop