キス税を払う?それともキスする?
 会議室の準備が終わると今日は珍しく部内で朝礼があるらしい。

「誰か新しく人が入ってくるのかな?」

 新人の人が配属される時や転職や異動で新しく人が入る時は朝礼をして紹介するのが通例だった。

 派遣の人が配属された時は朝礼はなかったし、大勢過ぎて一人一人の紹介もなかったけれど…。

「こんな時期に誰だろうね。
 4月ってわけでもないのに。」

 二人は不思議に思いながらも部長の席前で行われる朝礼に急いだ。


「えー。こちらが神奈川支店から異動してきた森山海翔くんだ。
 今日から同じ部で働くことになった。
 では森山くん。
 自己紹介をお願いするよ。」

 森山海翔。

 聞いたことのある名前に、群衆の後方にいた華は遠くに見える森山の顔を確認する。

「初めまして。森山海翔です。
 神奈川支店では自動車部品の設計をしていました。
 今年度入社のまだ1年目ですが頑張りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。」

 やっぱりそうだった。
 同期の森山くん。

 華は可奈の方を見ると可奈もこちらを見ていた。

 部長が加えて森山を紹介する。

「この時期の異動は会社が危機に面している時だからこそ優秀な人材を本社へという意向がある。
 私たちも今が正念場だ。
 こういう時だからこそ会社をより良くしていこう。以上。」

 人が散り散りに席に戻った。
 華と可奈も自分の席に戻ることにした。

 森山とは新人の懇親会という名の飲み会で話したことのある同期の中でも仲がいい方だった。
 人懐っこい性格で子犬みたいなつぶらな瞳は男の人だけれど可愛いと思わせる子だった。

 配属が神奈川で疎遠になっていたのだが、本社勤務に異動になったようだ。
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