キス税を払う?それともキスする?
 南田に渡されたマンションの住所が記された紙。それを頼りに華は南田のマンションへ向かっていた。

 スマホも携帯も持たないという南田に驚きながらも、納得できる理由が南田らしかった。

「そんなものに縛られたくない。」

 ゴーイングマイウェイを地で行く人。華は少しうらやましかった。

 自分の意見はあるような…でも流されてしまう自分。
 南田とのことも流されてここまで来てしまっている。このままでいいのかな。

 そんなことをたまに思っても、結局は何も変えられないままだった。

 丁寧で几帳面そうな字で書かれた住所にたどり着くと、早くも帰りたい気持ちだった。

 そこは高級マンションだったからだ。

 でももうすぐ待ち合わせの時間。連絡手段もなく、無断で帰ってしまえば、後々、何を言われるか分からない。

 帰る勇気も出ずにインターホンを押した。
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