キス税を払う?それともキスする?
 朝になるとテレビでは大々的に華たちの会社がニュースになっていた。

「キス税を認証する機械を作っている会社が認証アップの対策に乗り出しました。」

 また何を始めるんだろうと他人事のように、ぼんやりテレビを眺めた。

「社員一人につき、異性の社員とペアになるように業務を調整します。
 足りない人材は早急に確保します。」

 ニュースに度々出てくる華たちの会社の社長が発表している。

「え…何それ…。」

 会社が大きければ大きいほど自分の会社の動向をニュースで初めて知るというのは日常的なことだった。
 キス税の機械の開発を始めることもニュースで知ったほどだ。

 アナウンサーは尚も話す。

「企業にはキス税を払っている人数の割合が多いと罰金が課せられることが先日可決されました。
 その対策のようです。」

 そんなこと会社の問題だから自分には関係ないことだと思っていた。

 まさかそんな形で影響があるなんて…。

 どの会社でもそこに勤めている人のキス税を払っている割合は簡単に知ることができた。

 その割合が高いと会社としての支出が今後増えることはもちろん、特に華の会社の場合、残業過多で出会いを奪っているのではないか…と悪名が高くなってしまう。

 キス税、婚姻率の上昇、少子化への歯止め。

 様々なことが叫ばれているため、全てに関わるとされているキス税は今や重要な企業イメージとなっていた。

 企業イメージが悪くなれば優秀な人材を確保できない。
 会社としても生き残りをかけた苦肉の策なのだろう。

 それにしたって…。

 アナウンサーの締めくくりの言葉はこうだった。

「この対策はすぐに実施されることが決まり、月曜からの実施だそうです。
 さすがキス税の機械を扱う会社ですね。」

 明日から…。働いてる社員には準備段階で教えてくれてもいいのに…。

 何もかもから振り回されている気がする華はベッドに倒れ込んだ。

 コメンテーターが意見しているのがかろうじて聞こえる。

「では、そのペアは相性がいい人を独自に計算してはじき出された最高のペアということですね?これは素晴らしい。」

 ブチッ。

 華は乱暴にテレビを消して布団を頭からかぶった。

 大きなお世話!もう私のこと放っておいて欲しい。

 国も、会社も、そして南田さんも!
< 39 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop