キス税を払う?それともキスする?
 食堂で可奈と昼食を取っていると派遣の子が何人かやってきた。

 その中には南田とペアだった加藤がいた。

「奥村さんごめんなさい。」

「?」

 華は身に覚えのない謝罪にきょとんとした顔を向ける。

「私が部長に相談したんです。南田さん無表情で怖くって…。
 だから奥村さんが南田さんとペアになったのは私のせいで…。」

 今にも泣き出しそうな加藤に驚いて華は可奈と顔を見合わせた。

「部長に相談したら私と交代させるって言ったの?」

「いえ。部長には「南田はできる奴だからペアなのは喜ぶべきだぞ。そのうち慣れる」と言われました。」

 部長ならそう言いそうだ。南田のことを高く評価していることが常日頃から垣間見えていた。

「じゃあなたのせいじゃないんじゃない?本当に手違いだったかもしれないし。」

 そうなのかなぁと困り顔の加藤に華は微笑んだ。

「大丈夫。わざわざありがとう。」

 派遣の子たちはペコッと頭を下げると去って行った。

「華ちゃん。さっきの人たち、みんな私たちより年上ばっかだよ。」

「え?そうなの?…そりゃそうか。私たち1年目だったね。」

 毎日を必死に過ごしていて、まだ1年目だということを忘れていた。

 そっか…まだ新人だったんだ。私たち。

「それなのに華ちゃんにばっかり頼る派遣さんもどうかと思うよ。
 人生経験はそっちのが積んでるんでしょ!って言ってやりたい。」

「可奈ちん。派遣の人に聞かれるよ!」

 急いでたしなめても素知らぬ顔で話し続ける。

「何よ。反対意見があるなら言えばいいのよ。
 1年目の華ちゃんに教えてもらわないと仕事できないような人たちなんでしょ?
 そんなの変だよ。」

 可奈がプリプリと怒って、お茶をがぶ飲みする。

「可奈ちんが飲むとお酒に見えるよ。」

 アハハッと笑う華に「もう。華ちゃんのことなのに!」と華にまでプリプリした。
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