覚醒者３号－第二次調査報告－
廃棄された素体達は、その殆どが理性と知能を著しく低下させてしまっている。

他の人間に助けを求めるとか、村から出て近隣の街に救助を要請するような知性は残っていないのだ。

それ故に素体達はこの村に留まり、壊れた精神のまま生き続ける。

そして時折迷い込む人間を襲ってしまったりもするのだ。

それがこの村…『人狩り村』の真実という訳だ。

…この少女は実験で精神や肉体の崩壊を起こす前に『覚醒者としての素質なし』と判断され、この村に廃棄された。

その為に理性も知能も失わずに済んだのだろう。

もっとも、実験の影響は彼女にも見受けられる。

感情の起伏に乏しく、表情も少ない。

これは実験によるものなのか、その過程における人間不信によるものなのか…。

彼女もまた、機関の犠牲者には違いないのだ。

そう思うと可哀相で仕方がなかった。

「大丈夫、もう大丈夫よ…」

「あ…」

私がその幼い身を抱きしめると、少女は小さく声を上げた。

「貴女みたいな子が、こんな場所にいちゃいけないわ…私と一緒にこの村を出ましょう」

「…でも…｣

無表情のまま、それでも少女の声色に若干の不安の色が見えた。

「大丈夫よ｣

私は少女の顔を見つめて微笑んだ。

「私は覚醒者なの。絶対に貴女を助けてあげるわ｣


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