覚醒者3号-第二次調査報告-
第五章

ななみ

黛さんは私の手をしっかりと握る。

…不思議な感覚だった。

他人と手を繋いだ事はある。

機関の施設で、実験が嫌で個室の隅にうずくまっていた時。

研究班の男に強引に個室から引きずり出された。

あの時の手の感触は忘れられない。

硬くて、強引で、私の意思を全て否定する感触。

でも、黛さんの手は違う。

繋いだ瞬間から安心感が伝わってくる。

柔らかくて、温かくて、優しくて、その癖私の手から離れない。

こんなに弱々しい力で握っているだけなのに、私には黛さんの手を振り払えそうにはなかった。

事実黛さんに引かれるままに、私は歩き出す。

黛さんなら安心してついていけるかもしれない。

表情には出せないけれど、そんな安心感を私は感じていた。

しかし。

「……?」

そんな黛さんの歩みが止まる。

…上空をヘリが飛んでいるのに気づいたのは、それとほぼ同時だった。

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