BAD & BAD【Ⅱ】
私は師匠の抵抗を押し切って、師匠が着ているパーカーを強引に胸下まで剥いだ。
パーカーの下に隠れていた師匠の体に、眼を瞠った。
え?
何、これ。
脇腹だけじゃない、お腹にも胸下にも腰にも。普段服で覆われてる体の領域に、無数の生傷や傷痕が刻まれている。
わざわざ見えないところに、傷が。
もしかして、以前海を嫌がったのも、昨日お風呂について悩んでいたのも、この傷だらけの体を見られたくなかったから?
つい最近ついた傷じゃ、ない。
いつから、傷を負っていたの?
不良になって、喧嘩し始めてから?
それとも、ずっと、ずっと昔から?
「なっ、なんでもない!」
「……師匠」
「なんでもないよ、幸珀」
私が、師匠の古傷に触れようとしたら。
師匠は露骨に焦りながら、すぐさまパーカーを下ろして、傷だらけの体にかぶせた。
なんでもない、わけがない。
でも、師匠がそう言うのなら。
そういうことにしておこう。
「そうですか。ならいいんです」
おそらく、脇腹にできていた生傷に、ここに落下した時にくじいた足の痛みが響いたんだろうな。
その生傷も処置してあげたいけど、救急箱がないからできない。役立たずだな、私。