BAD & BAD【Ⅱ】




神雷のメンバーの誰よりも、師匠と一緒にいた時間は長かったのに、これっぽっちも気づかなかった。


今、初めて師匠のボロボロな体を目の当たりにして、初めて師匠の生々しい傷を知った。




師匠の密やかに忍ばせる能力には、私の優秀な直感くんさえもひれ伏すしかないな。



私の師匠ってすごい!ついでに、師匠の弟子の私もすごい!


思わせぶりなたかやんとは大違いだ。見習ってほしいよ。




「痛みは、どうですか?」


「え?えっと……」


「少しは和らぎましたか?」


「う、うーん、微妙、かな」


「そうですか……。やっぱり固定するだけじゃダメなんですね」




いつ、誰に傷つけられたのかはわからないけれど、師匠は誰にも何も悟らせずに過ごしてきた。


弟子である私の目も欺いて、屈託なく笑いながら。



そうやって服の下に潜めてきた秘密を、

師匠は「なんでもない」と取り繕ってごまかそうとしているのに、無理に問い詰めて詮索するなんて野暮なことはしたくない。




それに、私に「話してください」と頼まれたから話す、なんてのはただすがりついているだけだ。


自分が話そうと思ったから話した、そうでなくちゃ強くなれないし、意味がない。



聞いてほしそうにしていても、自分から話さない限り聞いてやんない。


世の中そう甘くないんですよ、師匠。




話したくなければ、話さなくていい。

一生、秘密のままでいい。



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