BAD & BAD【Ⅱ】
瞬間、師匠の顔つきが変わった。
総長らしい、凛々しく引き締まった顔。
まるで、覚悟を灯らせたかのような。
先程までとは正反対の雄々しい師匠に、誰もが息を呑んだ。
1人以外、全員。
その1人とは、もちろん私。
あぁ、やっぱり、師匠だ。
赤く腫れた目元も、未だに潤んでいる瞳も、震えないように引き結んでいる唇も、涙をこらえようと眉間にしわを寄せている眉も。
何も、どこも、豹変なんかしていない。
私の知っている、師匠だ。
どんなに必死に強がったって、師匠の純粋さを見抜いてしまう。
「泣き止んだなら、壊れたゲーム機について、弘也としっかり話し合ってくださいね」
「……幸珀」
「なんですか?」
「頼みがあるんだ」
「話し合いに関わる頼みですか?」
「ううん」
違うんかい。
別件の頼みかよ。
一体、何の頼みなの?