BAD & BAD【Ⅱ】
……しょうがないな。
「そこまで言うなら、いいですよ、やってあげます」
「わあ、ありがとう!」
「本当にいいんですね?」
「うんっ。思いっきりやってね!」
それ、最高の笑顔で言うセリフじゃないですよ。
オレンジジュースをかけられるのが、そんなに楽しみなんですか?
あまり乗り気しない私は、渋々オレンジジュースの缶の蓋を開けた。
立ち上がって、座っている師匠の頭上にオレンジジュースをセットする。準備OKだ。
師匠、心なしかワクワクしてません?
「いきますよ?」
「どんとこい!」
固く目を瞑った師匠の頭上で、缶を少し傾ける。
――ピチャンッ。
たった1滴だけこぼして、すぐに缶の向きを戻した。
「はい、終わりです」
「へ?」
間抜けな声音を漏らした師匠は、解せぬと言いたそうなご様子。