BAD & BAD【Ⅱ】
堕天イノセント
きつく、きつく。
それでいて、優しく。
包み込んだ師匠の冷たい手に、だんだんと温もりが帯びていく。
「強く、なりたかった。でも、なれなくて。俺だけじゃ、限界があって……」
「師匠、知っていますか?」
私が背中を押さなくても、独りで「もーういいよー」と手招きしたのなら。
仕切りを作っていた境界線は、しゃぼん玉になって、パチンと割れる。
ほら、顔を上げて、手を伸ばして。
壁が失くなった今、ここから仲間を頼って。
踏み込んでしまえば、もう、信頼を確かめる言葉は要らない。
自分で答えを見つけて、奥底に錠をかけて沈めていた「助けて」を吐き出せた師匠と一緒に、私達なりのやり方で道を切り拓いていこう。
「1人1人が不完全でも、皆で力を合わせれば、なんとかなるんですよ」
「そこは完全になる、とか言っとけよ。格好つかねぇな」
「だってさ、珍獣どもが完全になるとか、ありえなくない?」
「真顔で言うな。お前も珍獣どもに含まれてるの忘れんなよ」
たかやん、辛辣!!
せっかくいい感じにきまってたのに、台無しだ。
いいよね、たかやんは。珍獣じゃなくて調教師だもんね!
私は珍獣というより、きゃわゆい獣じゃない?