BAD & BAD【Ⅱ】
きっと、師匠はまだゲームの画面の向こう側に、強い思い入れを抱いている。
砕かれたゲームの世界への嘆きは、そう簡単に消えやしないだろう。
それでも、笑って弘也を許せたのは、師匠の言う「キラキラ」が画面にではなく、現実でも散らばっていると気づいたから。
師匠は、もうとっくに、強い。
悲しみを、新たな喜びで上書きしてセーブできているほど、強い。
それだけのことのようで、それはとても難しいこと。
師匠の真心に勝るものはない。
「京、本当にいいのか?弘也をぶん殴ったり、足蹴にしたり、こき使ったりしなくて」
「寛大な京はそんなことしませーん。いろんな意味でちっちゃい桃太郎とは違うんだよー!」
「んだと!?さっきまでおろおろしまくってたくせに!」
「おろおろなんかしてないもーん」
「とぼけんな!」
先程まで師匠はわんわん泣いていて、皆もどことなく縮こまっていたのが嘘みたいに、陽気に騒がしくなった。
てか、うるさい。
いきなりぎゃーぎゃー叫びすぎ。
もっとしんみりしていてもよかったのに。