BAD & BAD【Ⅱ】





……なんて、一瞬思ったけれど。


どうやら違ったみたいだ。




師匠の無垢な笑顔に、それはただの杞憂だったと思い知らされた。



師匠は、知っているんだ。


同情や思いやりが生まれるのは、仲間が師匠を想っているからこそだって。




そういえば、先程、師匠はボヤいていた。




『それに、自分の力だけじゃ、もうどうにもできないだろうし』


『強く、なりたかった。でも、なれなくて。俺だけじゃ、限界があって……』




1人だけでなんとかできるならそうしたい、どうにかしたい、まだ耐えられる。

そう自分に言い聞かせるように。



それが、体の傷を秘密にしていた理由だったとしたら。



師匠の内側には、背負いきれなくなって『どうにもできない』と思わせたほど、重たいものがあるということだ。


「助けて」の4文字すらあんなに苦しそうに、あんなに必死に言っていた師匠に、私達も必死になって応えなければ。





「あの、傷だらけって……?」



真修が、不穏げに首を傾げた。



あ、そうだ。下っ端組は大部屋にいなかったから、師匠が泣いていた原因も知らないんだった。


原因を知っている奴らですら、あわあわしてるんだから、そりゃちんぷんかんぷんになるよね。



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