BAD & BAD【Ⅱ】





「それで、どう助けてほしいんですか?」


「母さんを、変えてほしいんだ」


「えっ、家族の縁を切りたいってことですか?」


「そ、そうじゃなくて!」




私の質問に、師匠は即座に返答した。


あ、違うんだ。



母親を変えたいだなんて言うもんだから、てっきり母親を新しくしたいという意味なのかと思っちゃった。それってある意味怖いな。違ってて安心した。



「じゃあ、どういう意味なんですか?」


「母さんの性格というか癖というか……なんて言えばいいのかわからないけど、とにかく母さんのことを変えてほしいんだ!」



説明が下手にもほどがある。



師匠がなんて言えばいいのかわかってないのに、私達がわかるわけないだろうが。


察しろってか?無理だよ。エスパーでもいない限りわかんないよ。



「京の傷を付け加えて考えると、つまり、京の母親の暴力的なところを直してほしいってことか?」


「そう!鷹也よくわかったね、すごい!」



エスパー、いた!

なんでわかったの!?


たかやん、すごっ。すごすぎて、逆に恐ろしいわ。




「俺の家は俺と母さんの2人だけの、いわゆる母子家庭で、母さんは俺のことを女手一つで育ててくれてるんだ。でも、それゆえの精神的・肉体的苦痛が当然あって。母さんは夜になると、疲れを癒そうとお酒を飲むんだけど……」



言葉を詰まらせた師匠の顔つきが、だんだんと悲しみに染まっていく。



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