BAD & BAD【Ⅱ】
驚きを隠せない京ママに追い打ちをかけるように、師匠は服の裾をめくった。
あらわになった無数の傷痕に、京ママは絶句する。
「ま、まさか、これも……?」
「……うん」
「そんな……嘘、でしょ……」
京ママは脱力し、緩やかにソファから流れ落ちてしまった。
床にへたりこんだ京ママの指が、目の前の傷をかすめる。
「いつから、なの?」
「思い出せないくらい、昔から」
それを聞いて、顔がより一層青白くなった。
ここからだ、師匠の訴え力が問われるのは。
さあ、師匠。
今まで秘めていた想いを、京ママに伝えてあげて。
「ずっと、京くんを傷つけていたなんて、知らなかった。自分が酒乱だとわかっていたら、お酒なんか飲まなかったのに」
京ママの頬に、大粒の涙が滑った。
深い夜の奥の奥で、哀愁と困惑が溺れていく。
「ごめんね、京くん。謝って済む問題じゃないけど……ごめん、本当にごめ……っ」