BAD & BAD【Ⅱ】
「そう言われても、やっぱり無意識に責めてしまうわ。だって、お酒をやめても、京くんの体についた傷痕も京くんが感じてきた苦痛も、永遠に残ってしまうかもしれないのよ?」
「残ってもいいよ」
「なっ……」
「痕でしかない傷も、昔の痛みも、今の俺にはどうだっていいんだ。そんなことのせいで母さんが悲しむ方が、よっぽど辛いよ」
はっきりと線引きされた。
過去は過去、今は今だと。
今はもう割れてしまったゲーム画面の中に、ずっと溜めて込んできた苦しみは、これは過去のものだと割り切られ、捨てられた。
「母さんはわかってない。俺がどれだけ母さんを助けたがってるのか、どれだけ母さんを想ってるのか……全然わかってないよ!」
師匠は、全力で叫んだ。
必死に紡ぐ言葉は、師匠と京ママの絆のような、頑丈な糸みたいだ。
「ねぇ、謝らないで。苦しまないで。責任を感じないで」
「きょ、うく、」
「俺じゃ頼りないかもしれないけど、母さんの代わりに家事をたくさんやることしかできないだろうけど……少しでも、母さんを楽させられるように、頑張るから」
床は、京ママの涙で染まっていた。
もらい泣きしてしまったのか、師匠の瞳まで潤んでいる。
「だから、母さんが背負ってる荷物を、俺にも持たせてよ」
「……っ」
「2人で支え合っていこう?」
「…………う、ん」