BAD & BAD【Ⅱ】
幸珀の細い腕を、力なく掴む。
もう、離さねぇ。
「凛、どうしたの?なんか変だよ」
「最悪な夢、見ちまった」
「はあ?夢?……って、やっぱ寝てたんかい!!」
幸珀が無理やり、腕を掴んでいた俺の手を払った。
ひでぇ。せっかく掴んだのに。
「人の話は聞きなさいって教わらなかった?」
「話?」
「昨日の作戦の結果を、今皆に話してたじゃん。忘れちゃったの?寝すぎてボケた?」
「ボケてねぇ」
あぁ、そうだった。
この遊戯室に集まって、お茶でも飲みながらまったりと、幸珀の話を聞いてたんだった。
でも、月曜日の放課後だからか異様に眠くなって、俺はまた畳の上でうとうとしてたんだった。
「結果はどうだったんだ?」
「ついさっき話したばっかなのに、やーっぱり忘れてるんじゃん。ボケてる証拠だよ」
「話したっけか?」
「もうっ、ちゃんと話聞いてよね!作戦は大成功したよ!」
怒りながらも再度教えてくれる幸珀を見てると、しみじみ思う。
今日も平和だな、と。
あんな夢、さっさと記憶から消しちまおう。
夢は、所詮夢。
きっと、不穏を知らせる通達でも、未来を示唆する正夢でもない、ただの無意味な幻だ。