BAD & BAD【Ⅱ】
「幸珀の秘密を共有して、僕の秘密を打ち明けた、あの瞬間を」
「っ……ひ、みつ……?」
善兄が恋した運命的な瞬間かは知らないが、その瞬間なら憶えている。
忘れてしまいたかった。
忘れられるわけがなかった。
記憶が濁流となって、頭の内側をガンガン刺激する。
『秘密を、聞いちゃったんだ』
――あれは、中学2年の春。
桜が儚く散っていく中、公園にあるブランコに乗って、善兄と2人きりで話していた。
あんまり思い出さないようにしてたのに。
蘇った恐怖に、力が抜けて。
善兄の手を引き剥がしたがっていた、自分の手がだらんと下がる。
こうなるから……弱くなっちゃうから、思い返す時間は無意義なんだ。
「思い出した?」
私は頷くことも首を振ることもできず、ただただ硬直していた。
善兄に溺愛され始めたのは、私と善兄が秘密の共有者になった、あの時からだった。
「思い出したんだね。嬉しいよ」