BAD & BAD【Ⅱ】
虚しいほど不格好にしかめられた私の顔を、うっとり見つめられ、静かに目を逸らす。
「あの秘密、誰にも言ってないよね?」
「……言ってないに、決まってるでしょ」
いくら嫌いな奴だからって、他人の秘密を軽口でペラペラ喋るような、非常識なことしない。
善兄は、とても愛おしそうな笑みをこぼした。
「幸珀は、優しいね」
「え?」
「『お前なんか要らない。独りになっちまえ』って言えば、僕を突き放せる。それをわかってて、言わないなんてさ」
「っ、言うわけないでしょ!」
だって、あたしは、善兄を精神的に傷つけたいわけじゃない。
物理的に離したいんだから。
「そういうところが、好きなんだ」
まだ、頭の内側がガンガンしてる。
“あの日”の姑息な雑音も、善兄が秘密を話すささやかな声も、あの事件の無様な鼓動も、私をかき乱して嘲っている。
何かを、予感させるように。