BAD & BAD【Ⅱ】
「僕には、幸珀がいればいい」
善兄は我慢できなくなったのか、私をギュッと抱きしめた。
頭に落とされた記憶の衝撃が疼いて、体に力が入らないせいで拒めない。
今すぐ離れろ変態!!と、たくさん喚きたいのに、できない。
不快感でいっぱいだ。
「幸珀しかいらない」
もしかして、善兄の愛が執着的なのって、あの秘密のせい……?
「だから、幸珀も僕だけを求めて」
だとしても、私の気持ちは変わらない。
今にも私を密室空間に閉じ込めたくて、うずうずしてそうな善兄に、私の貴重な恋心はあげられない。
だんだん、手に力が戻ってきた。
グーパーグーパー、握ったり開いたり。よし、不完全で弱々しいけど、なんとか拳は作れる。
私は精一杯力を振り絞って、拳を善兄のお腹に当てた。
本当は殴りたかった。
でも、これが今できる、最大限の抵抗。