BAD & BAD【Ⅱ】
扉を開けたら、たった今階段を上がりきった朔の姿があった。
なんでここに朔がいんの?朔もサボり?
「何してんの?」
「……妙に胸騒ぎがしたから」
頭をかきながら、ポツリと呟かれる。
足元に転がされた視線に、照れくささが忍ばせてあった。
私のことを心配して、わざわざ戻ってきたの?
相変わらず、面倒みいいね。
その胸騒ぎは、正しい。私の直感くんは、珍しく働かなかった。何やってるんだ、直感くん!ちゃんと仕事をしろ!
「さっき、階段とこで兄貴と出くわした」
私が何か言う前に、朔は綺麗な横顔を暗く沈めながら、階段の下らへんを顎で指した。
朔は、気づいてるんだ。
胸騒ぎの原因が、善兄だって。
……てか、善兄しかいないよね。
私と朔だけが、監禁した犯人が善兄だと、知っている。
教えても誰も信じてはくれないと、なんとなく確信していたし、教える気もなかった。
教えたって、誰も善兄を押さえつけられはしない。
たとえ、私より力の強いお母さんやお父さんでも、無理だろう。
善兄の心はきっと、悲しいことに、私以外に揺らせやしない。