BAD & BAD【Ⅱ】
「…………ずるいなぁ」
「ん?」
「いえ、何も」
穏やかに微笑んだ唄子ちゃんに、私もつられて笑顔を返す。
ブレないねぇ。
唄子ちゃんの笑顔には、時々執念のようなものを感じるよ。
含まれている感情は違えど、唄子ちゃんの笑顔はいつだって完璧に作られる。
師匠みたいな無邪気さが無いからこそ、ひどく鮮やかに、濁った純愛が表面化されている。
同じ女として、少し怖い。目的のためならどんな汚い手もやりそうで。
不良としては……面白い。
唄子ちゃんが喧嘩を売ってきたら、今みたいに笑って買ってあげるよ。
「幸珀先輩」
「なに?」
「少し、お時間ありますか?」
「あるっちゃあるけど……」
「歩きながら、あたしとお喋りでもしませんか?」
お喋り?弘也に会いたいんじゃなかったの?