BAD & BAD【Ⅱ】
突然、どうして……。
まあ、いっか。私も唄子ちゃんと1対1で話してみたかったし、頼まれた飲み物はあとで買えばいいし。
可愛い子からのお誘いを断るのはもったいない。
「いいよ」
そう淡泊に頷けば、唄子ちゃんは嬉しそうに髪を揺らした。
いきなり唄子ちゃんが歩き出して、私は黙って唄子ちゃんについていった。
どこを目指して歩いてるんだろう。
少しして、漂う沈黙を遮ったのは、私だった。
「唄子ちゃんは、弘也にあんなに冷たくされてるのに、どうしてそこまで自分の想いを貫けるの?」
「もしかして、あきらめた方がいいって言ってます?」
「あ、ごめん。言い方が悪かったかな。あきらめろとかそういうんじゃなくて、ただ疑問に思ってさ」
不思議でならない。
唄子ちゃんみたいな美少女が、チャラくて自己中な弘也にこだわってることにさえ驚愕なのに、弘也が唄子ちゃんを相手にしてあげていないなんて。
普通、逆じゃない?
唄子ちゃんの表情が、甘美にほころぶ。
「運命は最初から決まってるんです」
「え?運命?」
「いくらひろちゃんがあたしを敬遠していても、それは今だけのこと。いつか、あたしの元に戻ってきます」