BAD & BAD【Ⅱ】
避けられていることに気づいてたんだ。気づいていないと思ってた。唄子ちゃん、ポジティブなんだもん。
見て見ぬフリをしていたのかな。
「断定した言い方なんだね」
「はい」
即答か。すごいな。
その絶対的自信は、どこから来るんだろう。
唄子ちゃんは静かに、左手の薬指に視線を落とした。
「初恋を捧げた者同士、赤い糸で結ばれているんですから。童話の世界の、王子様とお姫様のように」
初恋を捧げた者同士って……弘也の初恋は、唄子ちゃんだったの?
唄子ちゃんが弘也の許嫁なのが、真実か嘘かわかんなくなってきた。
「幸珀先輩は、赤い糸の存在を信じていますか?」
左手の薬指から私へ、なぞるように移された、じめついた視線。
赤い糸、かぁ。
「うーん、どっちでもいいかな」
「随分と適当な答えですね」
ありゃ、赤い糸信仰者の唄子ちゃんにこの答えはまずかったかな。
気に障っちゃったならごめんね。