BAD & BAD【Ⅱ】
「ふふっ」
「笑うなよ!」
短髪だから、耳たぶが赤く染まってるのも、よーく見えるよ。
弘也の照れ顔は新鮮だ。写メ撮って、皆に見せびらかしたい気分。
「可愛いねぇ、たか……あ、間違えた、弘也は」
「今の、わざとでしょ」
「えぇ、なんのこと~?」
「わざとだろー!?」
「わざとじゃないもーん」
「とぼけるなー!!」
舌をペロリと出しておどけてみせたら、弘也がさらに顔を真っ赤にして、照れ隠しなのか腕を大きく振った。
数秒して、弘也は我に返る。
「……やっべ、コーラ持ってた方の手を振っちゃった」
「コーラって、誰が頼んだんだっけ?」
「剛」
「ふはっ、剛ならいいや。振ったこと言わずに渡そうよ。絶対笑えるよ」
缶を開けてコーラがプシャーッと吹き出て、びっくりしておろおろしてる剛の姿が目に浮かぶ。
そのシーンを、ムービーに収めたいわ。私をパシった報いだ。
さっきまで確かに感じていた不快感が、溶けていく。
昼休みの終わりが間近に迫る中、私と弘也は顔を見合わせて笑いながら、飲み物を抱えて廊下を進んでいった。