BAD & BAD【Ⅱ】
落ちたノートを拾いながら、唐突に投下された事実を噛み締める。
知りたくなかったよ、そんな悪夢。
善兄が、この街にいるだって?
「う、嘘でしょ」
「生憎だが、嘘じゃねぇ。今月は家にいるんだとよ」
「なんで!?」
「気分じゃねぇの」
「……なんだよ、どんな気分だよ、自分ん家に帰れよ」
実家に帰省してんじゃねぇよ。夏休みはもう終わったよ。
一人暮らし満喫しろよ。迷惑なんだよ。さっさとこの街から立ち去れ。
あれ?大学生の夏休みは長いんだっけ?そういうのやめろよ。羨ましいな、このやろう。
「こっちからでも大学には通えるし、一人暮らしにも飽きてきたんじゃね?」
「飽きる飽きないの問題なの?」
「さあ?したことねぇからわかんねぇ」
地獄が終わったと思ってたのに、再び地獄に逆戻りだ。
だから、教育実習最後の日もあっさりしてたのか。くっそう、騙された。
いつどこで善兄と遭遇するかわかんない、このスリル。ロシアンルーレットしてるみたいで胸糞悪い。