BAD & BAD【Ⅱ】




調理室に入ると、誰もいない代わりに剛の別荘に泊まった時の、あのアールグレイの香りがした。


いい香りだなぁ。気分が爽快になる。



確か、雑用は下っ端の役目だったよね。それじゃあ、真修か下っ端が、集会のためにわざわざ淹れた可能性が高いな。



私の分もあるのかな。集会に参加するメンバーだけに淹れたのかな。


私のがなかった場合のために、やっぱり何か飲んでおこう。




冷蔵庫から取り出した、ペットボトルに入った麦茶を、棚にあったコップに注いだ。



「ぷはーっ!うん、うまい!」



麦茶の美味さは揺るぎないね。


え?飲み方がおっさんみたいだって?冗談やめろし。おっさんぽくならないように小指立てて飲もうかしら。






「……なんだこれ」



ふと足元に視線を転がしたら、ゴミ箱の中に捨てられていた、見慣れない物に目が留まった。



麦茶を飲み干してコップを洗面台に置いてから、興味本位でソレを拾い上げた。


手のひらサイズの長方形のソレの中身は、何にもなく、空っぽだった。




ソレ――市販の睡眠薬の箱を、ぼんやり眺めながら、小さく首をひねる。



「誰のだろう」



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