BAD & BAD【Ⅱ】
凛の表情を、視界に鮮明に捉えられた。
ひどく、苦しそうな表情。
もしかして、今、悪い夢に襲われているの?
そして、きっと。
その夢には、私が出てくる。
さっき凛が夢の内容を話さなかった意味がようやくわかって、胸が締め付けられた。
「こは、く」
何度も、何かに足掻くように小さな声で私の名前を呼ぶ凛が、とても愛おしい。
凛は、毎晩こんな風に、悪夢にうなされているのだろうか。
いや、夜だけじゃないかもしれない。凛はいつでもどこでも眠りにつくから。
「幸珀……っ」
離したくないと言いたげに、手首を力いっぱい掴む骨ばった手に、空いてる方の自分の手を重ねた。
ねぇ、凛、大丈夫だよ。
私はここにいるよ。
明日から、凛が悪夢を見なくなりますように。
そんな想いと祈りを込めながら、凛の手を優しく握った。
凛が起きた時、微笑んで「おはよう」と囁いてあげよう。
きゅっ、と圧縮した胸の奥の奥で、計測できないほどちっぽけな違和感が息をしていたことに、私は気がつかなかった。