BAD & BAD【Ⅱ】
それ、前も言ってたね。
私ってそんなに変わってるかな。
自分では、平均を超えた美しさと強さしか、他の人と変わってるところが見当たらないんだけど。
「あんなことしたのに、あたしを避けるどころか気さくに話しかけてきてくれて、その上あたしの証明を楽しみそうにしているなんて、相当変です」
「迷惑だった?」
「いえ、そういうわけでは……」
ならよかった。
可愛い後輩に嫌われちゃったらどうしようかとドキドキしたよ。
「今までは皆、あたしに怯えて、ひろちゃんから遠ざかっていってくれました」
今まで……?
過去にも、唄子ちゃんは誰かに罠を仕掛けたんだ。
おそらく弘也を好いていたであろうその誰かには、唄子ちゃんの喧嘩を買う図太い度胸が生まれなくて。
片思いをあきらめさせられたのか。
そりゃ、唄子ちゃんの重たい純愛を前にしたら、普通の一般的な女の子は恐れをなして避けるわな。
「だけど、今回は、あたしの思い通りにはなってはくれなくて……初めてのことにちょっと動揺しています」
乙女思考な唄子姫を憂鬱にした、初めての喧嘩相手が私?
なんて光栄な。ありがたき幸せ。なんちゃって。