BAD & BAD【Ⅱ】
2人は決して、唄子ちゃんの名前を口にしない。他人行儀に愛想悪く『あいつ』と呼ぶ。それほど嫌いなんだろう。
その気持ち、よーくわかるよ。私も善兄のことを呼ぶの、勉強するのと同じくらい嫌だもん。
「どうやって、本物かどうかテストするの?」
「期間は、今週の月曜から金曜までの5日間。鷹也と弘也が入れ替わってることを見抜けたら本物、逆に最後まで見抜けなかったら偽物。仕組みは簡単だろ?」
剛のわかりやすい説明に、「なるほど」と相槌を打つ。
唄子ちゃんの愛が本物だったら、好きな人がどんな姿をしていてもわかるってことか。
「この作戦、剛が考えたんだっけ?」
「ああ」
「ふーん」
「なんだよ」
「なんにも。ただ聞いただけ~」
剛も意地が悪いな。
簡単だなんて、軽々と言ってくれる。
簡単なのは仕組みだけ。
双子が入れ替わってお互いを意識しながら真似していたら、本質を見透かす洞察力がそれなりに長けている、私みたいな人間じゃないと入れ替わってることに勘付くのは困難だろう。
「そういえば、唄子ちゃんって勘が鋭くなかった?」
「だからこそ、だろ?」