BAD & BAD【Ⅱ】
フッ、と剛の口元が緩められた。
「なーんだ、知ってたんだ」
念入りに男装していた私の正体に、すぐに気がついた唄子ちゃんの観察眼をごまかし、すり抜けられたら。
本物の愛ではないという結果が、より確かで明瞭になる。
それを承知で、わざとこの作戦を計画したのか。なかなか危ない賭けに出るね。そういうの嫌いじゃないよ。
「だけど、あんたらが勝手にテストしても、唄子ちゃんがあきらめなければ意味ないんじゃない?」
「多少強引にでもあきらめさせんだよ」
剛がやけに自信あり気に足を組んだ。
あの、天使の皮をかぶった悪魔の唄子ちゃんを、あきらめさせる?本当にできるの?
唄子ちゃんが弘也をあきらめるところなんか、想像できないんだけど。
「秘策でもあるの?」
「最後に追い討ちをかける」
「追い討ち?どんな?」
秘策の概要を聞きながら、おにぎりを頬張った。
……ふむふむ。明日、その策略を実行して作戦を終えるってわけね。
概要を話し終えた剛は、純朴とは到底かけ離れた、不良にふさわしいひねくれた眼差しをしていた。