BAD & BAD【Ⅱ】
サイズのでかいおにぎりにかぶりつきながら、おかずを1つずつ食べていく。
おにぎりをようやく半分食べ終えて、「それにしても」と話を続けた。
「唄子ちゃんを今まで欺き通せていたなんてすごいじゃん。たかやんと弘也の演技力に絶賛するしかないね」
「楽勝だよー。だって、あいつは僕を好きなんじゃないもーん」
え?そうなの?
私には、唄子ちゃんが弘也にベタ惚れに見えたよ?
「恋に恋してるだけなんだからさ~」
弘也の笑顔がひどく冷たくて、凍えてしまいそうだった。
言い方は軽いのに、表情は重たくて固い。
対照的な落差が、ダークな部分を暗示していた。
ある意味、感情表現に富んでいるのではないだろうか。
「あんなに好き好きアピールしてるのに?」
「思い返してみなよ~。あいつが僕に直接『好き』って言ってきたことが1回でもあった~?」
そういえば、ない……かも?
特別だとか赤い糸だとかは何回も話していたけど、直接告白してるシーンは目撃したことがない。