BAD & BAD【Ⅱ】
なんでだろう。
本当に弘也を好きじゃなかったのかな。それとも、好きって言うのは、さすがの唄子ちゃんでも恥ずかしいとか?
「でも、弘也が初恋で運命の人だって、口癖のように言ってるじゃん」
「そういうところが、あいつがサイコパス予備軍である所以なんだよねぇ」
顔をしかめながら、椅子の背もたれに腕を置いた。
ぶっちゃけ私も、唄子ちゃんの精神は正常からちょっとずれているとは感じていたけども、サイコパスは失礼なんじゃない?そこまでじゃないでしょ。
「今は僕に恋愛感情なんか持っていないくせに初恋に依存し続けて、邪魔だと思った奴らを平気な顔して傷つけてさぁ。ほんと、バッカみた~い」
なぜか、恋愛経験豊富で修羅場現場に何度も立ち会ったことのある女子の愚痴を、永遠と聞かされてる気分だ。
はいはい、唄子ちゃんを嫌ってるのはわかったから、不機嫌オーラを惜しみなく放射するのやめなさい。ご飯が不味くなる。
「そりゃ昔は、あいつのお姫様キャラも可愛いと思ってた時期もあったよ~?」
目を伏せて、「だけど」と声を沈ませる。
「もう二度と、あいつを好きにはなれない」
「……だな」
たかやんが静かに同調すると、音が途切れた。