BAD & BAD【Ⅱ】
過去というものは、人生におけるただの通過点に過ぎない。
タイムマシンが発明されない限り、私は過去に行って、昔の若い仲間に会うことはない。
過去があるから、今がある。
それはわかっているけれど、過去よりも今現在の成長した仲間の姿の方が、ずっと大事で重要だと思うんだ。
私の仲間は、今、ここにいる。
人それぞれ様々な感情を抱いてきた過去を知らなくても、知っていても、仲間なのは変わらない。
私は、仲間の過去の面影ではなく、今目の前にいる仲間自身と向き合っているのだから。
それでも――。
「そうだよ、語りたいんだよ!」
「素直だね、弘也」
茶化したのに、弘也の視線はぶれることなく私を射抜いている。
その真っ直ぐな瞳に、ほんのわずかに口元をほころばせた。
「幸珀に聞いてほしいんだ。僕と鷹也の、たどってきた過去を」
――それでも、過去にこだわるのなら。
どれだけ情けなくても、過酷でも、虚しくても、少しでも多くの“自分”を知っていてほしいのなら。
現在までの経緯と強くなるまでの昔話を、当時の幼い気持ちを添えて仲間と共有して、さらに力強く支えてほしいと心から望んでいるのなら。
しょうがないから、拒まずに受け取ってあげるよ。
その熱い想いを。