BAD & BAD【Ⅱ】
どうなってんだ、この双子は。
一度、見てみたかったな。しっかりしてる弘也と、調子に乗ってるたかやん。実際に見たら、コントかと思っちゃうかも。
「……まあ、性格が変わったのはあいつのせいなんだけどねぇ」
例えるならば、スイッチ。
今までオフにされていた弘也のスイッチが、その一言でオンに切り替えられた。
一瞬、しん、と空き教室全体が静まり返った。
たかやんと弘也の瞼が、ほぼ同時に下ろされ、視界を遮る。
すぐに、瞳を撫でるように瞼が上げられた。
視界に少し影を帯びたまま、弘也が口を開いた。
「あれは、僕らがまだ小学5年生だった頃」
いつになく透き通った声音で語られ始めた、2人の過去。
「あの頃の僕は、あいつの本性をこれっぽっちも知らなくて、あいつのことを可愛いな、好きだなって純粋に想ってた」
「初恋、だったんだろ?」
「そうそう。あいつが初恋とか、今考えるとすっげぇ不気味」
剛にカラカラ笑って返した弘也の、地味に間延びしていない喋り方に、苦しみの重さを感じ取れた。