BAD & BAD【Ⅱ】
「あいつが女子には優しくだのお姫様だの言ってたのは、どうやら自分にだけ優しくしろって意味だったらしくてさ」
たかやんが、唇の隙間から息を這わせた。
遠回しすぎる!だったら最初からそう言いなよ。
弘也はアホなんだから、直接言わないと気づかないよ。
「弘也が告られる回数が急激に多くなって、あいつは自分の言葉が裏目に出た苛立ちと嫉妬に耐え切れなくなったんだろうな。俺に『たかちゃんがしっかりしてないから』って八つ当たりしたんだ」
たかやんは関係ないだろ。
それは2人の問題だよね?八つ当たりするなら弘也にしなよ。
小学生のお付き合いも大変なんだなぁ。
「なんか妙に責任を感じて、一応弘也に注意したんだよ」
「そんで、僕はあいつ以外あんまり優しくしなくなったんだけど……」
優しいな、たかやん。私なら、どうでもいっかって放置しただろうな。
私が「だけど、何?」と続きを促せば、弘也はぐへっとみっともない笑みを浮かべた。
「僕への告白は一向に減らなかったんだよね。モテる男は辛いなぁ」
「……こいつ、海に沈めていい?」
「俺もそうしたいのは山々だが、やめとけ」
「えー」
「やめとけ」