BAD & BAD【Ⅱ】
剛に止められなかったら、完全に弘也にどついてた。命拾いしたね。
ここでモテ自慢すんな!
露骨にデレデレすんじゃねぇよ!変態かっ!
「見ての通り、こいつが告られる度にあからさまに嬉しがってさ」
「あからさまじゃないよ!」
「気持ち悪ぃ笑い方してんじゃねぇか。それのどこがあからさまじゃねぇんだよ」
たかやんが正しい。はい、弘也の負けー。
鏡見て、自覚しろよ。
断言してもいい。そのデレ顔が公開されたら、100年の恋も一時に冷める。絶対に。
「そのせいで、あいつの心が限界に達しちまって……ある日、あいつの本性があらわになる出来事が起こったんだ」
たかやんの言葉の後に、グシャッと何かが潰れる音が聞こえた。
ふと右隣を一見すると、弘也が空になった紙パックを、力いっぱい握りしめていた。
さっきまで割と穏やかだったのに、一気に空気が張り詰めた。
ここからが、2人に「嫌い」を植え付けた、過去の闇色に淀んだパーツなんだ。
語るのを一度やめた2人を、私も剛も気遣おうとはしなかった。
それは私達が薄情だからではない。大丈夫だと、心の底から確信していたからだ。