BAD & BAD【Ⅱ】




皆が皆、愛情を持っていて、それぞれ異なる愛し方がある。



愛は、時に染まりやすく、時に揺らぎやすい。


たったひとつの行動で、満たされることも壊れてしまうことも、欠落することだってある。



「平然と人を傷つけて、悪びれもせずに笑ってるあいつの悪意をも好きになれるほど、僕はオトナじゃない」



私も、同じ。

善兄の溺愛を受け入れられずに、嫌っている。


多分、これからも、私はオトナにはなれないのだろう。




「その時に、あいつが僕に一度も好きだと告げなかったことにも気づいたんだ」


「最初から弘也を好きじゃなかったってこと?」


「いや、きっと、最初は確かに僕のことを好きだったんじゃないかな」




あくまで憶測として、曖昧に呟いた。


私もね、ちゃんとした証拠や理由はないけど、唄子ちゃんの初恋は弘也だと思うよ。女の勘ってやつだね。私の直感くんが言うんだから、間違いない。



「恋愛感情とはき違えた、家族愛ならぬいとこ愛だったのかもしれないけどね」



はははっ、と下手くそな笑みをこぼした弘也を、たかやんは心配そうに見つめていた。



< 467 / 730 >

この作品をシェア

pagetop