BAD & BAD【Ⅱ】
皆が皆、愛情を持っていて、それぞれ異なる愛し方がある。
愛は、時に染まりやすく、時に揺らぎやすい。
たったひとつの行動で、満たされることも壊れてしまうことも、欠落することだってある。
「平然と人を傷つけて、悪びれもせずに笑ってるあいつの悪意をも好きになれるほど、僕はオトナじゃない」
私も、同じ。
善兄の溺愛を受け入れられずに、嫌っている。
多分、これからも、私はオトナにはなれないのだろう。
「その時に、あいつが僕に一度も好きだと告げなかったことにも気づいたんだ」
「最初から弘也を好きじゃなかったってこと?」
「いや、きっと、最初は確かに僕のことを好きだったんじゃないかな」
あくまで憶測として、曖昧に呟いた。
私もね、ちゃんとした証拠や理由はないけど、唄子ちゃんの初恋は弘也だと思うよ。女の勘ってやつだね。私の直感くんが言うんだから、間違いない。
「恋愛感情とはき違えた、家族愛ならぬいとこ愛だったのかもしれないけどね」
はははっ、と下手くそな笑みをこぼした弘也を、たかやんは心配そうに見つめていた。