BAD & BAD【Ⅱ】
笑みが途絶えて、温度が少し下がった。
「……あいつを好きじゃなくなって、なんとなくだけど、感じちゃったんだよ」
「何を?」
「あいつの言葉で僕の性格が変わって、そのせいであいつ自身も変わって、全部全部ごっちゃごちゃになって……」
寂しさをはぐらかすみたいに、弘也は喉元を締め付けさせていた。
「いつの間にか、あいつの中にあった僕への想いが、丸ごと消えちゃったんだって」
恋愛に限らず、誰かの心が離れていく時、誰かから心が離れていく時、何とも言えない喪失感と悲しみが押し寄せる。
それが弘也の元に、両方同時に襲ってきたんだ。
しかも、小学生という幼くて未発達な、青い頃に。
どんな思いを抱き、どんな思いに嘆いたのか、私には到底想像もつかない。
唯一わかるのは、「好き」がひとつ減って、「嫌い」がひとつ増えたということだけ。
「それでも、あいつは初恋に依存して、僕に執着してた。嫉妬心が暴走して、女の子達を痛めつけるほどに」
「俺達に助けを求めてきた女子が先生を呼びに行ってくれたおかげで、事態は一旦鎮められた」
「でも、先生達はただの子どもの喧嘩として片付けたんだ」