BAD & BAD【Ⅱ】
唄子ちゃんが来る前の弘也の様子からして、そうだろうと思ったよ。
私が弘也でも確実に忘れてた。むしろ、そこだけ記憶から切り取って捨ててた。
「これで、僕と鷹也の過去の話はおしまい」
「1ついい?」
「ん?なに~?」
あ、喋り方が元に戻ってる。
やっぱり、ダラけた喋り方の方が弘也に合ってるね。
「弘也もたかやんも、唄子ちゃんの暴力的姿を目の当たりしていながら、よく女子を嫌いにならなかったね」
女子恐怖症になってもおかしくなかっただろうに。
弘也は視線で宙を仰ぎながら、おもむろに口を開く。
「……だから、かなあ」
「どういう意味?」
「あいつに傷つけられて泣いてる女の子を見たら、余計に優しくしてあげなきゃ、守ってあげなきゃって思ったんだよねぇ」
どうしてだろう。
とてもイケメンな回答をしてくれてるはずなのに、弘也が言うとチャラ男の口説き文句にしか聞こえなくなるのは。