BAD & BAD【Ⅱ】
こらそこっ、弘也と剛でコソコソ囁き合いながら含み笑いすんのやめろ!どうせ私の悪口言ってんだろ!?
私が物理的に内緒話を強制終了させてやろうかと、椅子から腰を上げたら、
「ど、どうだったー?僕らの過去は」
と、弘也が焦ってはぐらかした。
どうだったって聞かれてもなあ。
渋々、座り直す。
やばいとかすごいとか、語彙力のない感想しか言えないよ。
しいて言うなら……。
「2人の負のオーラが痛かった」
「はい?」
弘也の聞き返しを、華麗にスルーする。
2人の「嫌い」の大前提には、自己防衛による恐怖心がある。
それは、唄子ちゃんが巻き起こした凶悪な出来事が、一瞬にして脳内に染み込んでしまったから。あと、唄子ちゃんの粘り強い性格も原因の1つなのだろう。
好きと嫌いは、裏表。
ひっくり返すのは、自分と相手の心意気次第。
……けれど、過去を聞いても私の心は変わらず、唄子ちゃんを嫌いにはなっていない。
執着の矛先が、私じゃないからだろうか。
どうしても憎みきれないんだ。面白いところもあるし、第一可愛いし。
あ、でも、悪いことしたらきちんと謝るってのは、しっかり教えてあげないといけないな。人生の先輩として。