BAD & BAD【Ⅱ】
「お前あの時、俺に会えた途端、俺に抱きついて号泣し出したろ?」
「そうだったそうだった。あれは黒歴史だ。朔の前で泣くなんて、一生の不覚」
「そこまで!?」
思い出すだけで恥ずかしい。
あの時が、初めてだった。
朔の前で泣いたのは。
私を見つけてくれて、すごく嬉しかったんだ。
心細くて仕方がなかったけど、朔の温もりに触れたら安心できた。
朔は何も言わずに背中を撫でてくれて、それがさらに涙を誘って。
しばらくの間、涙が止まらなかった。
危うく朔に惚れそうになったよ。惚れなかったけど。セーフ。
「あの時だけは、朔が私を守るナイトに見えたなぁ」
「俺は、あの時初めて、お前が女だって気づいたぜ」
「はい!?それまでなんだと思ってたわけ!?」
「今流行りの、男の娘かと」
おいこら。
寝言は寝て言え。