BAD & BAD【Ⅱ】





「お前あの時、俺に会えた途端、俺に抱きついて号泣し出したろ?」


「そうだったそうだった。あれは黒歴史だ。朔の前で泣くなんて、一生の不覚」


「そこまで!?」



思い出すだけで恥ずかしい。




あの時が、初めてだった。

朔の前で泣いたのは。


私を見つけてくれて、すごく嬉しかったんだ。



心細くて仕方がなかったけど、朔の温もりに触れたら安心できた。



朔は何も言わずに背中を撫でてくれて、それがさらに涙を誘って。


しばらくの間、涙が止まらなかった。




危うく朔に惚れそうになったよ。惚れなかったけど。セーフ。




「あの時だけは、朔が私を守るナイトに見えたなぁ」


「俺は、あの時初めて、お前が女だって気づいたぜ」


「はい!?それまでなんだと思ってたわけ!?」


「今流行りの、男の娘かと」




おいこら。

寝言は寝て言え。



< 48 / 730 >

この作品をシェア

pagetop