BAD & BAD【Ⅱ】
2人の距離がなくなっていくのに比例して、唄子ちゃんの様子が強ばっていく。
唄子ちゃんの瞼が、うっすら開かれる。
目の前にあるのは、大好きな人の顔。
今は、幸せの絶頂。
そのはず、なのに。
2人の唇が重なり合う寸前、唄子ちゃんはたかやんの胸を押して、キスを拒んだ。
「っ、あ……」
我に返り、信じられないと言いたげに唇を震わせていた。
「ごめ……、ひろちゃん、ごめんなさ……」
自分が何をしたのか、わかっていないんだろう。
珍しく、不格好に崩れた表情をしている。
「あたし……っ」
「ほーら、やっぱりねぇ」
「……え?」
勢いよく開いた扉から出てきたのは、言わずもがな弘也だ。
私と剛も、給水塔から降りる。