BAD & BAD【Ⅱ】
思い出したって、いいことなんか何もない。
あんな事件ひとつに振り回されたり、狭くてちっぽけな殻に閉じこもったり、犯人に怯え続けたりするだけ。
そんな人生、願い下げだ。
そりゃあ、あの事件をきっかけに変わったことだって少なくないよ?
でも、そんなこと気にしてたらキリないじゃん。
あんな辛い思いは、もう二度としたくない。
だからこそ、私は弱くても強いと言い張り、怖くても前を見据え、自分の意志に基づいた行動に後悔しない。
そうしていれば、私の元に自然と、自由と幸福が訪れる。
「朔も私を追い越すくらい強くなって、善兄をなんとかしてよ」
「俺だって頑張ってんだよ!」
「その頑張りは報われていないようだけど?」
「う、うっせぇ!!」
プイッと顔を背けられ、私はやれやれと顔を左右に振る。
早く努力が実を結ぶといいね。
てか、お願いだから一刻も早く、実を結んで役立たずを返上して。私の身の安全を保証して。ボディーガードらしくなって。本当にお願い。